- 液体ガスケットでくっついたオイルパン脱着!外した感ゼロを目指す!
- 2020年7月26日こだわり整備
-
フルカワさーん!
助けてくださーい!
いきなりどうしたんじゃ!?
オイルパンを外したいのですが、外すのが怖いんですー!!!_人人人人人人人人人人人人人人_
> オイルパンを外すのが怖い <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
僕も怖いですー!!!
えー!!!
二人共怖いのかーい!!!登場人物紹介
ミケちゃんフルカワさんナリタ※この時点でまだナリタオートの日常を読んでないあなた!
先に読んできましょう!
オイルパンの外し方がわからないからナリタさんに聞いたのに「わからない」って言われて、困ってるんですー
教えてって言われても自分もあまり経験ないし、どうやるのが正しいやり方なのかわからないから、困ってるんですー
ミケちゃんはともかく、ナリタは整備工場の社長なんだから、泣くのはやめなさい。
ミケちゃん、オイルパンの脱着方法は、学校で習わなかった?
学校では脱着はやったのですが、紙ガスケットを使用するタイプだったんです。
で、今回やろうとしているのは液体ガスケットで固定されてるタイプ。
液体ガスケットって、どうやって剥がして、どのくらい塗って組み付けるのか、全然わからなくて・・・
なるほどねぇ。
じゃあ、外し方から組み方までを、順を追って説明していこうか。
目指すは外した感ゼロ!_人人人人人人人人人人人人人_
> 外した感ゼロを目指す! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
よろしくお願いしまーす!!!
とりあえずネジは全部取ったんですが、このオイルパン、しっかりとくっついちゃってびくともしないんですけど、どーやって外すんですか?
ネジは全部とっちゃダメだから。
外れた時に落ちちゃうから、2本くらい緩めた状態でつけておいてあげて。
こんな感じですかね。
そうそう。
じゃあやっぱり、まずはこの可変プライバーで下方向へ力を加えながら、このオイルシールセパレーターを突っ込んで・・・
いやいやいやいや〜
ダメだから。
え、これが基本的なオイルパンの外し方じゃないんですか?
それは最後の最後の最終手段。
基本はこれ、木ハンマーを使う。
木ハンマー?
これでオイルパンをぶん殴るって事ですか?
そう!そのとおり!
これを、こう!↓↓↓YouTubeでも説明しています↓↓↓
これで叩いて、本当に外れるんですか?
まあまあ、見ていてな。
面を叩くと凹んでしまうから角を狙って叩くのがポイントじゃな。悪い例 面を叩いてはダメ
良い例 角の強度のある部分を叩く
(1分ほど経過して)
まだ何も変化が無いんですけど、本当に外れるんですか?
何を言ってる。
もう外れかけているじゃろ。
接着面をよく見てみなさい。
オイルが少し漏れてにじんで飛び出てきてるじゃろ。
オ、オイルがにじんで飛び散っている・・・
このタイミングで可変プライバーじゃ。
うまく入るなら、普通のバールやマイナスドライバーでもOK。
強くこじって接合面を傷つけないように気をつけよう。
もう外れたー!!!!!
簡単じゃろ。
はい!
こんな簡単な外し方があったなんて!
むしろ多くの人が最終手段を最初からやってるのが不思議じゃな。
液体ガスケットの材質がひどくて接着力が強すぎて木ハンマーで外れない時がある。
その時が最終手段を使う時じゃな。
しかしその最終手段、プライバーでこじりながらオイルパンセパレーターを使うと、大問題が残る。
オイルパンをこじってセパレーターを使うと・・・大問題?
接合面が傷つくのと、オイルパンが歪む!
これは大問題じゃ!!!_人人人人人人人人人人_
> 接合面が傷つく <
> オイルパンが歪む <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
接合面の傷やオイルパンの歪みは、共に密着度を低下させてしまうから、将来的なオイル漏れの原因になったりするんじゃ。
ってことは、今まで自分がやってきた方法は・・・
今頃漏れてきてるかもな。
そんなー。
よかれと思った方法が結果的に新たな不具合を発症させてる。
勉強不足の整備士あるあるじゃな。
そんな事にならないよう、先に正しい方法聞いて良かったです。
では次にこの液体ガスケットの剥がし方を教えよう。↓↓↓YouTubeでも説明しています↓↓↓
これはもちろん、スクレーパーで削ぎ落とす感じですよね。
もちろんそうじゃが、そのスクレーパーはダメじゃな。
このスクレーパー、何かダメなんですか?
市販されているスクレーパーはなぜか薄っぺらいものばかりで、使いづらい。
市販品を全否定・・・なんで使いづらいんですか?
研いでも研いでも切れ味がよくならん。
それに先端が少しでも引っかかると、全体がシナってよけいに食い込んでしまうんじゃ。
下のイメージほどシナるわけじゃないが、とにかく気持ちよく削れんのじゃ。※イメージ
こんなこと、考えたことありませんでした。
じゃあ何を使うんですか?
太くてシナらないやつ。
値段も安く形状的に加工しやすいノミがとりあえずおすすめかな。
別に何でもいいんじゃけどな。ノミとその研ぎ方については以下記事をご覧下さい。
これをスクレーパー代わりにするってことですか?
そう!
でもそのまま使うわけじゃなくて、砥いで尖らせて切れ味を良くする!
ちょっと砥いでみなさい。
こ、こんな感じでいいんですかね?
なっとらんな!
それにしても、最近の若者は研ぎ方以前に、刃物を研ぐ事すらできんやつが多いな!
貸してみなさい!ノミとその研ぎ方については以下記事をご覧下さい。
YouTubeでも解説させてもらっています。
こんなもんじゃな。
液体ガスケットがたくさん乗ってる部分をスーッと削り取っていくぞ。
おおお~!!!
こんなに気持ちよく削り取れるものなんですね!!!
ほれ、一周ぐるっと削りとると輪っかにできた。
無駄なクオリティ。
でもノミの刃が届かない隙間とか段差とかで残った細かい部分はどーするんですか?
細かい部分にはホイールタイプの真鍮ブラシを使う。
それを電動ドライバーに装着させてな。
これでバシバシとハジキ飛ばしてしまうんじゃ。
カスが飛び散るから、できれば外でやった方がいいな。
ブラシを当てすぎるとオイルパンの塗装も削り取ってしまうから気を付けよう。
こんなものかな?
あっという間にこんなに綺麗になっちゃうんですね!!!
(道具さえ揃っていれば10~15分くらいで終わります)
気持ちいいじゃろ~。
使う電動ドライバーは、回転数が2000~3000rpmくらいのツールがベターじゃ。
10000rpm以上まわるエアードライバーとかもあったりするが、ホイールブラシが遠心力に負けてすぐに壊れてしまうから、適度な回転数の工具を使うんじゃな。
回転数高ければいいってものじゃあないんですね。
そしたら次は、反対側の接合面を整えよう。
これも同じ要領で、砥いだノミで削ぎ落とす感じですか?
もちろん。
ミケちゃん、やってみなさい。
わかりました!↓↓↓YouTubeでも説明しています↓↓↓
液体ガスケットが剥がれるのが気持ちよすぎて涙がでます。
ナリタさんもやってみてください。
こんな簡単にキレイにできるなんて感動です。
市販のスクレーパーとはなんなんでしょう。。。
ちなみに、まだ終わりじゃない。
ネジ穴にも注目しよう。
写真は別に悪い状態じゃあないが、ネジの締めすぎでアルミが盛り上がっている事があるんじゃ。
これがイメージじゃ。
ネジ穴の部分が接合面よりも盛り上がってるって事があるのですか・・・
極稀じゃが、ある。
整備士がグイグイと必要以上に締め付けてしまう事で発生していることがな。
これがオイルパンとの密着度の妨げになるから、削り落としておかねばならん。
なるほど。
金属の盛り上がりとなると、オイルストーンとかの出番ですか?
わしの砥いだ刃物は、オイルストーン以下かね。
液体ガスケットを削り取ったように、この盛り上がりもこの刃物で削れるんじゃ。
むしろオイルストーンは局部以外も削ってしまうから絶対に使ってはダメ。↓↓↓YouTubeでも説明しています↓↓↓
アルミが盛り上がってる部分も削り落とせるんですね!!!
アルミと鉄なら、鉄が勝つに決まってる。
とにかくこの盛り上がりが無いか全体を確認しながら削ぎ落としておこう。
ただ、最近はザグリ加工されてる率が高いから、ザグリがあれば気にしなくて大丈夫じゃ。ザグリがある場合のイメージ断面図
じゃあいよいよ、オイルパンに液体ガスケットを塗って取り付けですね!!!
まだだめじゃ!
みんなここで失敗するんじゃ_人人人人人人人人人人_
> みんなここで失敗 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
えーーー!!!
どこがダメなんですかーーー!!!?
オイルパンが”平ら"かどうか確認したかな?
オイルパンが?
たいら?
もともときれいにくっついていたんだし、丁寧に外したんだから平らに決まってるんじゃあないんですか?
オイルパンは平らとか限らない!_人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> オイルパンが平らとは限らない! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄↓↓↓YouTubeでも説明しています↓↓↓
液体ガスケットを剥がしてきれいにしたら、定盤に乗せて平らかどうか、必ず確認すること!
じゃないと、これも後々のオイル漏れの原因になる!
オイルパンはガタガタしないし、大丈夫ですね!
ちがう!
そうじゃない!
えーなんで!
さっきの逆で、ネジ穴が盛り上がっていたりすることがある。
その盛り上がりを直さないといけない。
これはザグリがあるタイプで時々ある。
そしてこれまた整備士が締め過ぎたりしていると発生していたり。
世の中の整備士さん達に厳しいですね。
じゃあシックネスゲージを入れたりして盛り上がりを探す感じですか?
わざわざそんな事をしなくてもいい。
叩けばわかるからな。
この板金ハンマーを使う。
た、叩く?
オイルパンを片手で支えて、ネジ穴とネジ穴の間をこの板金ハンマーの細くなってる方で叩く。
こ、これで何がわかると言うのでしょうか・・・?
音じゃ!
定盤とオイルパンが密着していれば密着している音がする。
密着していなければ、密着していない音がする。
密着していない音がする場合、その左右の穴を叩いて平にしてあげる。
音ややり方は次の動画を音声有りで見てみてくれ。
で、これが修正イメージ。
だいたい、いい感じの音になりましたが、なかなか直らない部分もあって、大丈夫ですかね?
完璧を求める必要はないから適度な感じで大丈夫。
これでやっと、オイルパンに液体ガスケットを塗れる。
やったー!↓↓↓YouTubeでも説明しています↓↓↓
オイルパンがだいたい平ら、反対側もだいたい平ら、それによって両者の隙間を最小限にする。
今までの工程は、隙間を最小限に抑えて将来的なオイル漏れを最大限に予防するための工程だったんじゃ。_人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 今までの工程は将来的な <
> オイル漏れを予防するためのもの! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
慣れてないと長く感じましたが、慣れれば素早く楽しくできそうですね!
では液体ガスケット、塗らせてください!
楽しんでもらえそうなら良かった。
では液体ガスケットをオイルパンに・・・
でもちょっと待ってください。
液体ガスケットはオイルパン側に塗ればいいんですか?
時々、反対側のミッションやエンジン側に塗ってるのをネットで見かけるんですが、どっちが正しいんですか?
どっちが正しいもなにも、オイルパン側に塗るのが基本であって、反対側には塗らん。
オイルがどんどん滴ってくるのに、丁寧に塗れるわけがない。
塗るとしても上を向いて落ちてくるオイルを気にしながら塗るくらいなら、オイルパン側に塗った方が合理的と思わんか?
わ、わかりました〜!
やっぱり液体ガスケットの塗り方も、コツとかあるんですか?
そりゃもちろん、たくさんある。
まずは液体ガスケットの色はグレーにすること!
色はグレーですね!
その理由は!?
純正で塗られている色でグレーがいちばん使用されている率が高いから。
それだけ。
もともと赤が塗られていたら、赤を使いたくなっちゃうかもな。
できる限り外した感をゼロにしたい。
それが大きな理由じゃ。
そーいう理由なんですね。
使う液体ガスケットは、どこのメーカーがおすすめとかありますか?
日産のPIT WORK!
量が多くて安い。
他はあまり知らんけど。
注文すればすぐ届くし。
あまりこだわって使ってるわけじゃあないな。
WAKO'Sのこれはどうですか?
WAKO'Sってのが、安心感あっていいなと思って、今まで使ってたんですけど。
ナリタは何でもかんでもWAKO'Sばっかり使いやがって!
WAKO'Sは量の割に高い!
そして色が気に食わない!
(WAKO'Sは無色で半透明な感じ)
だから使わない!
わかりました〜。
では塗り方を教える。
液体ガスケットに同封されているノズル、これは先端ギリギリでカットする。
できる限り細く出したいんじゃ。
こんな感じですか!?
そうそう。
それで一周、つなげて塗ってみなさい。
できました!
どうですか?
初々しさがあるけど、合格!
あとはネジ穴の外側にもね。
こうですか?液体ガスケットをよりキレイに塗る方法!回転落下式!
いいね!
まだまだ不慣れ感はあるけど、十分じゃな。
でもネジ穴の外側にも塗る必要、あるんですか?
これは万が一の話じゃが、ネジ穴が内側に貫通しているかもしれんからな。
ネジ穴からオイルが滲み出てきた場合の予防策じゃな。
それに、そこに塗っておいた方が、装着したときのはみ出し感が均一になってキレイなのが気分がいい。
キレイな方が外した感なくなるしな。
ほぼ気分の問題じゃな。
色といい、塗り方といい、結局は気分の問題なんですね。
でもこんなに細く塗ったんじゃあ、少なすぎませんか?
そう思うじゃろ?
ためにし、テキトーなものにその細さで塗って、潰してみなさい。
どのくらい広がっているか。
い、意外と広がっている!?
そう、意外と広がる。
そしてはみ出る。
はみ出しが多いとダサい。
気持ち悪い。
純正感無くなる!
結局そこが基準なんですね。
更に!
はみ出た部分は外側なら見えるじゃろ。
外側にはみ出た量はすなわち内側にも同量はみ出ている。
はみ出ている量が多いと・・・
お、多いと・・・?
内側に落ちて、ストレーナーが吸い込んでしまう。
それは、ストレーナーの吸う量が減ることを意味する。
過去に何度か、ストレーナーに液体ガスケットの破片がくっついているのを見たことがある。
次の写真は、実際にはみ出た液体ガスケットをストレーナーが吸い込んでいた物だ。
このストレーナーがついていたATの外したオイルパンがこれ。
外側へのはみ出しは少なくても、内側へはかなりはみ出している。
この写真くらいのはみ出し量だと、多すぎると言う事がわかるな。
よくたくさんはみ出してるの見かけますが、あまり良くない事なんですね・・・
良くない!
ほんと良くない!
はみ出し量が多いと気分が悪くなる!
最近は新車でも汚いのが多い!
ダメじゃな!
どんだけ気分で物事考えてるんですかー。
まあ、そうは言っても、はみ出しゼロはダメ。
内側に落ちないくらいの少し、ほんの少しはみ出しを作って、そこでオイルをせき止める。
はみ出しはそんな役割もあるから、はみ出しゼロを狙う必要もない。
ほら、液体ガスケットが固まっちゃうじゃろう。
早く装着しなさい。
わかりました!ちなみにこっちが外す前の写真
はみ出し具合、どうですか!?
いい感じじゃ!
まさに純正っぽい!
外した感ゼロ!
合格!
終始、ボーダーラインが外した感ゼロなんですね。
整備士たるもの、新車状態をキープさせるのが理想だと思わんか?
思いますー!!!
じゃあ、あと3台、同じ作業を受けちゃってるから、外注で依頼するから今日中にやっといてくれ。
教えてもらったばかりでいきなり3台はきついですーまとめ
オイルパン脱着作業は、
・木ハンマーで外す
・刃物で液体ガスケットを削ぎ落とす
・ホイールワイヤーブラシで残ったカスを落とす
・反対側の接合面もしっかりと液体ガスケットを削ぎ落とす
・ネジ山の盛り上がりを平らにする
・オイルパンもネジ穴の盛り上がりを平らにする
・液体ガスケットは細く均一にキレイにオイルパン側へ塗る
・装着したら均一にキレイにはみ出るくらいがベストこれらを実施することで、
・将来的なオイル漏れを最大限に防ぐ
・液体ガスケットのはみ出しによる弊害を防ぐ以上が期待できます。
そして、結果的に外した感ゼロ
にできます。
板金塗装もそうですが、直した感ゼロ
これって、理想だと思いませんか?
直した感ゼロは板金塗装だけのものじゃありません。
整備だって、外した感ゼロがいい。
ぜひ、あなたも外した感ゼロを目指して、オイルパン脱着作業をやってみてください!オイルパン脱着作業についてのご相談は、いつでもナリタオートのナリタまでどーぞ!
(ただし、整備士の方からの相談に限ります)