- 接合面を傷つけずキレイに素早く液体ガスケットを除去する刃物
- 2021年5月4日こだわり整備
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ナリタさ〜ん!!!
オイルパンにこびりついた液体ガスケットが全然取れないんです!!!
僕もあまり得意じゃないんだけど、貸してみて。
お願いします!
ちょっと時間かかっちゃったけど、こんな感じでどうかなぁ?
オイルパンの表面が傷ついてて汚いなぁ。
もっと素早く簡単に、そしてもっとキレイに仕上がるやり方があるから、教えてあげよう。
フルカワさん!
教えてください!登場人物紹介
ミケちゃんナリタフルカワさん※この時点でまだナリタオートの日常を読んでないあなた!
先に読んできましょう!YouTubeでも解説しています!
まず、これらは使わない。
スクレーパーやカッター。
え、どうしてですか?
スクレーパーやカッターと言えば、液体ガスケット等を剥がす時によく使う道具じゃないですか。
私が通った整備学校でも、スクレーパーを使うって教わりました!
まあ、結果的にはスクレーパーみたいな物を使うんじゃが、市販品は刃の幅が広すぎたり肉厚が薄いものが多かったり、材質があまりよくなかったりと、色々と使いづらいんじゃ。
市販品はダメなんですか!?
ダメってわけじゃないけど、もっと剥がしやすい物がある。
ホントですか!?
大工さんの道具の”ノミ”を代用してちょっと研いであげると良いんじゃ。
幅は細い物から太い物まで色々あるし、刃は肉厚があって力が逃げにくいし、柄もしっかりしていて握りやすい。
形状からしたらスクレーパーをよりゴツくした感じですね!
そうそう。
工場のどこかに転がってないかな?
無ければ近くのカインズホームで買ってきなさい。
すぐに行ってきます!※カインズホームで販売されている「利五郎」と言う商品の3本セットがおすすめです
サイズ感が分からないし意外とどれも高かったので、この3本セットにしてみました!
こんなのでどうですか?
上等上等。
細い物、中位、太い物のセットなら、用途に合わせて使い分け出来そうでお買い得だね。
なんなら100均で売ってるやつでも良いかな。
流石に100均にノミは売ってないと思いますけど。
じゃあこれを使って、早速やってみます!
おりゃー!!!
一応取れましたが、やはり接合面に傷が入って上手く仕上がりません・・・
誰がそのまま使えと言った。
そのままじゃあダメなんじゃ。
ナリタさんは我慢できなくてせっかちなので、早とちりばかりですね。
ど、どうしたら良いんでしょうか?
研ぐ!!!
研ぐ?
そう、研ぐ、砥石で。
砥石は無いか?
包丁研ぐやつでいい。
またカインズホームへ行って買ってきなさい。
持ってなかったので、カインズホームへまた行って買ってきました。
これこれ。
1000番くらいの荒さがちょうど良いかな。
包丁を研ぐように研げば良いんですか?
私もよく料理するので、包丁研げます!
私に任せてください!
包丁とはちょっと要領が違うかな。
研ぎ方の説明に入る前に、各部の名称を覚えておこう。※ざっくり調べただけなので違っていたらすいません
斜めの面を切り刃。
反対側の平なところが裏刃。
切り刃の先端が刃先で、反対側がしのぎ。
なるほど。
砥石は洗浄台に置いておくとサッと研げるし、水を使わないから万が一のサビの防止にもなるからオススメじゃ。
普通に包丁を研ぐ時はしのぎは研がないが、今回は研ぎやすさを重視するから、切り刃面を押し当てて研ぐやり方を教える。
まずはノミの切り刃の面を砥石の面に合わせる。イメージ
この面を合わせた状態で、利き手で柄を掴み、反対側の手を刃先の方に添えて、砥石に押さえ付けながら前後させて研ぐ。
ノミが前に倒れたり後ろに倒れたりしないよう、並行に前後するように気を付ける。
何か、コツはありませんか?
説明や写真、動画を見ても、実際にやってみるとなかなか並行に動かせているか自信がありません・・・
ノミを起こしすぎるとブレーキが掛かったような抵抗があるから、そのギリギリを狙って前後させるのがコツかな。
まあ、こればっかりは慣れかもしれんけど。
それと、切り刃が元々平らとも限らないから、切り刃面をきっちり研ぐというよりも、刃先側がしっかり削れているかどうがが大事なんだ。切り刃の面は元々平らとは限らない
そして、逆に寝かし過ぎてしまうと肝心な刃先が研げない。
その状態だとしのぎ側が削れるだけだから、全く意味がなくなってしまう。
最終的に大切なのは刃先が研げているかどうかじゃからな。拡大イメージ
以上がコツみたいなものかな。
わかりました!
研げました!
こんな感じでどうでしょうか!?
刃先がしっかり研げているみたいだし、そんなとこで十分。
次は反対側の裏刃を研ぐ。
こっち側は砥石に乗せて前後させるだけだから、多分簡単じゃ。
砥石に対して真っ直ぐに当てると研ぎにくいから、斜めに乗せて研ぐといいかも。
ちなみに、裏刃も最初は平らとは限らないから、裏刃側の刃先がしっかりと研げているかが重要になる。
結局、裏刃も切り刃とコツは同じような感じじゃ。
刃先がしっかりと研げれば、砥石を使って研ぐのは終わり。
じゃあこれを使って、再チャレンジしてきます!
まてまて、まだ終わってない。
最後に一番大事な処理をしなきゃならん。
研ぎ終わってるのに、あとは何をするんですか?
そのままだと刃先が尖りすぎて、結局さっきと同じ結果になってしまう。
だから、刃先を少しだけ潰して均(なら)す!
つ、潰して均す!?
そう潰して均す。
定盤なんかの固くて平らな金属に対して垂直にノミを立てて、刃先をほんの少し押し付けながら左右にゴリゴリとこする。
タイヤチェンジャーの台の上でもOK。
次に左右の角も同じ様に押し当てて潰す。
次に斜めに当てて、前後させて刃先を整える。
このちょっとした処理をしておくことこそが、傷を付けたくない接合面に引っ掛かりにくくする事ができるんじゃ。
ちょっと切れ味を悪くさせる感じかな。処理前の引っかかるイメージ
刃先処理後の引っかからないイメージ
先端がしっかりと潰れてるかわかりませんが、出来ました!
なんとなく潰れていれば良いんじゃ。
これで全工程が完了。
早速、オイルパンにべったりと残ってる液体ガスケットをとってみなさい。
オイルパンが傷つかず、スルスルと気持ちよく刃が進みます・・・
気持ちいいじゃろ。
この時点でまだ引っ掛かりを感じる場合、刃先がしっかりと研げていないか、潰し方が足りなかったりするから、やり直してみるといい。
引っ掛からず、液体ガスケットもスルスルいかない場合は潰しすぎかもしれん。
この辺は慣れるしかないから、練習あるのみかな。
次は反対側、ミッションケースのアルミに残った液体ガスケットを剥がしてみなさい。
今度は僕がやります!
ノミとその研ぎ方で、こんなにも引っかからずに気持ちよく液体ガスケットを剥がせるだなんて・・・
今まであんなに接合面を傷つけていたのは何だったんだろう・・・
こういうのは学校で教えて欲しかったです・・・
今知ったんだから、これから上手にやっていけばいいじゃない。
ちなみに、ノミに限らずいろんなものに対してこの研ぎ方は応用が効く。
いらなくなったマイナスドライバーの先を加工して刃物にしてもいいし、
折れたノコ刃も活用出来きたりもする。
刃物自体が柔軟にしなる方が良かったりするケースもあるからな。
こんな感じに用途に合わせて、オリジナルの刃物を自作すると更に楽しいんじゃ。
更に更に、この研ぎ方が上達すれば車のボディに貼り付けたシールを、塗装面を傷つけずに剥がす事が出来たりもする。
サンプル写真は軽トラだったから、ボディはすでに傷だらけじゃったが気にするな。
応用できる幅が広過ぎます!
早速、いらないドライバーを削ってみたくなりました!
刃物って、すっごく楽しいじゃろ。
おさらいすると、接合面につけてしまった傷は凹み。
傷からはサビが発生するかもしれないし凹みは漏れの原因にもなってしまうかもしれない。
だからこそ接合面の平らをキープさせることで将来的な漏れの予防にもなるから、接合面をより傷つけにくい整備を心がけたいな。
はい!!!