- ドラムブレーキの隙間調整
- 2017年11月6日ナリタオートの日常 こだわり整備 キャラ記事
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※この記事は読み手が自動車整備士としての基本知識がある事が前提で書いています
ナリタさーん!
お客様の紹介で入庫したこの車、何やってもキーキー音が直りません。
あー、これはたぶん、ドラムに原因がありそうだねー。
でもミケちゃんはさっき、ドラムブレーキもキッチリメンテナンスしてましたよ?
登場人物紹介
ミケちゃんトミーナリタ※この時点でまだナリタオートの日常を読んでないあなた!
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そーなんですよ。
車検と同等のメンテナンスをしたのに、全然キーキー鳴りっぱなしで。
そうか、ミケちゃんはナリタオートでメンテナンスを受けている車しかまだ知らないんだったね。
そー言われてみればそうかもしれませんが、他社のメンテナンスと何か違うんですか?
違うかどうかわからないけど、ドラムブレーキの隙間調整について教えてあげるから、そこから答えを導き出していこう。
珍しく結論を先に言わないんですね!
正直、この記事で話す事が正解なのか自信がないってのもあるからね。
まずはドラムブレーキの基本構造のおさらいをしよう。
さっぱりわかりません。
トミーはただの洗車アルバイトなんだから、わからなくても仕方がないよね。
ま、このくらい、基本中の基本じゃないですか。
ブレーキを踏むことでシューが左右に広がり、ドラムに押し付けられ、制動力となる。
で、ドラムとシューの”隙間”に今回の原因と思われる要素がある。
この隙間の何が問題あるんですか?
1年点検と車検の時にちゃんと調整してますし、この問題の車もちゃんと調整しました。
じゃあ何のために調整しているのかわかるかな?
えーと、隙間を詰めると効きが良くなるから、ブレーキの効きを良くするため!
正解、と言いたいけど、あと2つ、目的があるんだ。
うーん、わかりません。
トミー、何か言ってみて。
整備士でもない僕に無茶振りしないでよ!
何かボケ回答でもすれば盛り上がると思ったのに期待ハズレね。
さすがに意味もわかってないからボケれないよー。。。
1つは、ブレーキペダルを踏んでから効き始めるまでの空走距離を減らす為。
あ、空走距離がわからない人のためにこの図を見てみよう。
空走距離・・・停止したいと思う対象物を認識してから、実際にブレーキが効き始めるまでの距離
制動距離・・・ブレーキが効き始めてから完全に停止するまでの距離
停止距離・・・空走距離と制動距離を足した合計の距離
さすがに、自動車学校で習う事なので、わかりますってば!
ね!トミー!
え、う、うん!
わかるよ!
詳しく言うと、
1.止まりたいと思ってからアクセルからブレーキペダルへ足を移動させる
2.ブレーキペダルを踏み込み、ブレーキオイルを圧縮する
3.キャリパーピストンやホイールシリンダーのピストンが押し出される
4.ブレーキパッドとディスクローター、シューとドラムが接する
5.ブレーキが効き始めるが、制動モーションに入る前に先にサスペンションが沈み込む
6.ほぼ同時にタイヤもたわむ
7.サスペンションが限界まで縮み、タイヤもたわみきったところで、始めて制動し始める
ここまでが空走距離だと思います。
ついでに言うと、ボディのシナリとかも・・・
・・・・・・
別にそこまで厳密に説明してもらわなくてもいいんだよ。
とにかく、隙間が無い方がホイールシリンダーが広がり始めて効くまでの時間が少なくて済むから、空走距離も減るという事だ。
早く制動が始まるからこそ、効きが良いと感じるのかもしれませんね!
空走距離について長く話しすぎてしまったけど、もうひとつ、大切な理由があるんだ。
それはわかるかな?
わかりません!
早く答えを言え!
はいはい。
もうひとつの理由は「隙間に小石等が入らないようにする」だ。
普通に考えて、そんなとこに小石なんか入らないんじゃないですか?
めちゃくちゃ狭い隙間じゃないですか。
まあそうなんだが、極論で話すと、手動調整のドラムブレーキで、新車から全く調整せずに何万キロも乗ったとしたら?
めちゃくちゃスッカスカに隙間できますね!
だからこそ点検の時に隙間調整をしてあげるわけなんだが、調整機構が自動調整の場合・・・
ここに今回の問題が発生する。
自動調整がどうかしたんですか?
ナリタオートではちゃんと、自動調整だろうがキッチリ調整するじゃないですか。
ナリタオートは自動調整でもキッチリ調整するんだけど、自動調整機構の場合、調整しない人もいるんだよ。
だって自動調整だしね。
それは私も不思議に思いました。
自動調整されてるのに、更に調整する理由がわからないです。
じゃあ、よくある自動調整の偏心ギヤタイプ(名称間違ってるかも)の場合、自動調整が効いてから、いつもどのくらい調整している?
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だいたいですけど、2山くらい詰めますね!
って事は、自動調整が効いてても、あと2山分も隙間が空いてたって事だよね?
あ、そうか。
自動調整と言ってもギリギリまで隙間が埋まっているわけじゃないんだ。
だから、自動調整だけで隙間の具合を良しとしている場合、小石等が入り混んでドラムの表面を傷つけてしまうケースが多いんだ。
僕にはさっぱりです・・・
ってことは・・・
この車のドラムのシューが当たる面が段付き摩耗しちゃってるかもって事ですか!?
そういうこと。
ドラムの内面の段付き摩耗はキーキー音の原因になるんだ。
もちろん、キーキー鳴らない車もあるけどね。
ナリタさん、やっぱりひどい段付き摩耗でした。
ナリタオートの顧客の車のほとんどは段付き摩耗なんてしてないんで、盲点でした。
これはひどい!
どうひどいのかわからないけど!
そういえばこの車はキッチリ調整しても、ブレーキペダルを踏んでから効き始めるまでの距離も長い感じがしたんですけど、関係あるんですか?
もちろん関係あるさ。
この図を見れば一目瞭然。
これなら僕にも理解できますー!
つまり段付き摩耗してない方が良いわけですね!
そこだけ理解できて良かったね。
話をまとめると、
1.自動調整だけだと隙間が大きくなってしまう
2.隙間が大きいと段付き摩耗してしまう
3.キーキー鳴ったり空走距離が増えてしまう
勉強になりました!
つまり、定期点検は大事であり、定期点検毎に手動だろうが自動だろうがキッチリ調整してあげる事が大切という事ですね!
早速、スターさんのドラムレースマシーンで削ってきます!
ゴツゴツのザラザラから、スベスベになりましたー!
キーキーも鳴らない!
さっすがミケちゃん!
ちゃんと直って良かった良かった!
あとがき
えらそうな事を書いてしまいましたが、定期点検にちゃんと来店されるからといって、絶対に段付き摩耗が発生しないわけではありません。
キーキー音も確実に防げているわけでもありません。
隙間調整を確実に実施し、段付き摩耗する可能性を少しでも減らしているという感じです。
実感的には90%くらいの車両は段付き摩耗していません。
初入庫やオークションから仕入れた車で、明らかに定期点検を受けていなかっただろう車のドラムブレーキは段付き摩耗している事が多いです。
車種によってはキッチリ隙間を調整すると、かえってブレーキの効き具合に違和感が出るケースもあります。
そしてキーキー音の原因は多々ありますので、一概にドラムの段付き摩耗と断定できるものではありません。
この記事はあくまで隙間調整の大切さについて書かせて頂いたものですので、ほんの一例として頭の片隅に入れておいて頂けたらと思います。
最後の最後に宣伝ですいませんが、自動調整ドラムブレーキの隙間調整工具をナリタオートのオンラインショップで発売中です!ぜひ、あなたの整備にお役立て下さい!